いよいよ、今週末の土曜日に「浮田要三と『きりん』の世界」展の初日を迎えます。
おかげさまで、着々と準備は進んでおります。今日は、専門の業者を迎えて大きな作品の展示作業が概ね終わりました。明日からは、ガラスケースの資料展示を仕上げます。
そんな中、美術館の中嶋学芸員が作品を搬入する際に小﨑唯さんからお預かりした動画を貸してくれました。2013年3月3日に東京西麻布のTAKE NINAGAWAさんで行われた浮田さん最晩年のギャラリートークの様子です。(TAKE NINAGAWA様には、今回展覧会を記念して発行するリーフレットにも広告掲載でご協力をいただきました)
ギャラリーの後ろの方で座っている私の姿も一瞬写っていました。その場でもお聴きしたのですが、今回聴き直してみて、あらためて新しい発見がたくさんありました。
以下に、その最後の数分の語りを文字に起こして皆さんと共有したいと思います。一旦、トークが終わった後、浮田さんは「もう一つだけ」というニュアンスで語り始めます――
ボクは今までねぇ、こういうこと(制作)をやったり、『きりん』のことをやったりして過ごして来ましたけどね。これはねぇ、何に基いているか?と言うとね、ボクのエゴイズムが出てるんですわ。日本人はエゴイズムをあまり大事にしない。しかし、本当に良いモノを創る人間は、やはり本当のエゴイズムをマスターしないと、決して上手くゆきません。
で、エゴを本当に確立している人間どうしで、争いは絶対に起きません。絶対に、戦争は起きません。こういうことやってる人間の中では。だから、ボクはそういう意味で、絵が上手とか、下手とか、ということではなくて、人間としてのコンセプトがあって、そのコンセプトが、現代美術に反映している。そういう意味でボクは現代美術を普及させたいんです。
で、ボクは今、5~6人の弟子みたいなのがおりまして、アトリエを解放して、好きな時に来て、好きな時に帰ってゆく状態にある弟子が5~6人おりますけれども。そういうことをやってていただけると、そのうちに現代美術というものが下地になって、その上にみんなが行って欲しい、という、そういう願いがあってやっているわけで。
まぁ、あの、お金もうけるのもいいんですけどね。まぁ、ボクはあまりもうかりませんけれども。まぁ、そういう意味で現代美術というものをやりたい、と。
で、戦争は起こりません。絶対に。戦争だけは、あきまへんで!みんな!ボクはちょびっとだけ、兵隊に行って戦争が何か知ってますけど。もう、本当にもう、話になりません!
戦争ぐらい酷いものはありません!だって、人間の自由を根こそぎ持って行ってしまうんですから。個人の立場もクソも何もありません。ま、それで終わりますわ。
展覧会の準備をしながら、日々情報として入って来るニュースが、あまりに暗いのです。あらためて、今、この時期に、「浮田要三と『きりん』の世界」を皆さんにご紹介する意味の大きさを考えながら過ごしています。
皆さんも、どうぞ2か月間の会期中にはぜひともご来場ください。秋の気配も濃さを増す松原湖畔の美術館でお待ちしております。
(2022年9月12日)
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