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『きりん』が生んだブルース~デュオ・かりきりんのご紹介


 これは、2019年冬に「かりきりん」というデュオが京都のライブハウスJittoku(拾得)で演奏したステージの映像です。(最近、YouTubeで発見しました!)

 かりきりんのお二人は、児童詩誌『きりん』から自分たちで選んだ子どもの詩にメロディを付けて歌っておられます。

 あまりに楽しく味わい深い動画なので、先ずは視聴していただけばそれで良いのですが、私は生前浮田要三さんから彼女らの活動についてお聴きしたことがあるので、その思い出も含めて解説めいたことを書いてみたいと思います。

 2012年の秋、西さんと私が大阪東成区今里にあるアトリエUKITAをお訪ねした際に、浮田さんから、可愛らしい文字で宛名書きされた郵便物の包みを見せていただきました。

 それが、動画内でも語られている2012年に京都三条のUrBANGUILD(アバンギルド)で録音された音源を基に制作されたばかりのCD『かりきりん』だったのです。

 背面に黄色くきりんの文様がほどこされたディスクが、お手製の可愛らしいフェルト製のカバーに入れられ、わら半紙にコピーされた手書きの歌詞カードが添えられていました。

 それは児童詩誌『きりん』へのリスペクト(敬意)が滲み出るような姿をしていました。

 『オモロイ姉ちゃんたちやで。最初聴いたときは、なんやへったくそやなぁ思うたけど、

そのうちに、どんどん上手くなったわ。は、は、は!』

と、浮田さんが銅鑼を鳴らしたような大声で楽しそうに話されたのを、今も覚えています。

 ご厚意でそのCDをお預かりして、自宅に戻ってからさっそく聴いた私は驚きました。

 1940~1950年代の小学生が書いた詩の内容は、生活の貧しさを直接示すものもあれば、子どもならではの奇想天外な発想や、大人には失われた真っすぐな感受性に溢れたものまで実に豊かな世界を持っています。詩の作者の名前と住む地域と学年が紹介されますが、詩が作られた時の社会のありようや子どもと大人との関係の近さがそのまま保存され、聴く者に直接届いて来るような印象を受けます。

 ここでも、9曲が披露されていますが、どの作品をとっても他とは取り換えの効かない、唯一無二のユーモアと味わいが感じられます。

 おのずから、ブルース(Blues)に成っているのも、『きりん』に寄せられた子どもたちの詩が孕んでいたユーモアやペーソスにお二人の感性が感応したためにちがいありません。

 後半で紹介される山口雅代さんは、浮田さんを含め当時『きりん』にかかわっていた詩人たちを心底驚かせた天才少女でした。私たちは2016年に長野県佐久市で開催した全ぷれセミナー(ぷれジョブ関係者の集まり)に彼女をお招きして、少女時代に投稿した『きりん』の思い出をお聴きしたこともあります。その折、上田市まで足をのばして、小宮山量平さんの長女荒井きぬ枝さんにもお引き合わせすることができました。その心は、正しく少女のままだったと、今あらためて貴重な出会いを思い出します。

 今回、私たちが企画している「浮田要三と『きりん』」展(仮称)もまた、誰よりも今の時代を生きる子どもたちと一緒に創りたいと願っています。時代を超えて、子どもたちこそが児童詩誌『きりん』の主役なのですから。            (理事:宮尾 彰)

 


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