大阪淀屋橋のLADS GALLERYで開催された「浮田要三没10年展」では10回目のご命日にあたる7月21日(金)50名近い参加者を得て「浮田要三を語る会」が催され、皆さんの胸の内に生きる浮田さんが熱く、あるいはしみじみと語られました。会場に溢れるリスペクトと四方の壁面から寄せて来る浮田さんのオーラが対話を続けていました。
以下には、やはり浮田要三没後10年を記念して、来る8月27日(日)から9月17日(日)まで奈良の喜多ギャラリーで開催される展覧会をご紹介させていただきます。
これは、浮田要三という人間でなければおそらく企画されることのない、不思議な展覧会だと思います。浮田さんに特有の才能だった「人と人とを結びつける力」が、『きりん』の時代からアトリエUKITAを経て、杜の中の清楚なギャラリーに結晶化します。
きっかけとなったのは、山口雅代(美年子)さんの『ありとリボン』新版の出版でした。山口さんは、昨年の「浮田要三と『きりん』の世界」展の折にも新刊『こころがゆれた日』を出版されました。今回は、この本に出てくる息子昌弘さんの作品も展示されます。
この展覧会はもう一つの大切な意味を持っています。それは、浮田さんの逝去により閉鎖されたアトリエUKITAメンバーの作品が展示されることです。
その若き日に、児童詩誌『きりん』の編集者として関西地域の学校現場を熱心に歩かれた浮田さんは、行く先々で魅力的な子どもの絵に出会いました。それらが13年間にわたって『きりん』の表紙絵を飾ることになりました。
浮田さんは、生涯を通じて一人ひとりの子どもが表現する作品に深い敬意を抱いておられましたが、それと同じ心根をもってアトリエUKITAでも「人間のことを考える仕事」を最期まで続けられました。今回ここに集められる作品は、アトリエで浮田さんと直に触れあったお一人おひとりが「今、この時」に生きた証です。
浮田さんには、どこか『具体』の画家にも『きりん』の編集者にも納まり切らない、もう一つの、貴重な仕事があったように私は考え続けて来ました。今回の展覧会にはその秘密を解く鍵が詰まっているのではないか?と今から胸が躍ります。
80歳を迎えられたかつての「天才少女」山口雅代さんにお会いできる貴重な機会です。
10年ぶりに浮田さんからの「呼び出し」を受けられた井上明彦さんにもお会いします。
(2023年7月31日)
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