機関誌『具体』第1号のこと

 今回、「浮田要三と『きりん』の世界」展で第3展示室に展示する予定の機関誌『具体』(復刻版)について、少し触れておきたい。2010年に藝華書房から刊行された復刻版の監修には、会期中に小海町高原美術館にお招きする平井章一氏と加藤瑞穂氏も当られた。

 インターネットで公開されている「日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ」から、2008年夏に加藤氏が嶋本氏を訪ねて残されたインタビューを引用してみよう。



加藤:最終的に「具体」っていう名前になったのは、『具体』誌、この機関誌を出そうっていうことになったので、最終決定されたんですか。


嶋本:そうです。せやけど、この機関誌も、ずいぶん長かったんですよ。これはたまたま、僕は穴の開けた作品を持って行って。これを、先生がほめてくれはったんやけども、誰に見せても「こんなもん絵画じゃない、絵画以前のもんや」と言われてしもたんですね。それを吉原先生に言うたら「それじゃあ、何か雑誌に、機関誌をつくって、世界中に送ったら、分かるやろう」というので、「おまえ中心でやれ」というので。僕はそういう人たち、みんなと一緒にね。ぼくの家のところで、ほいほいっと手刷りですわ。手刷りの印刷物やからね、やってた。


加藤:浮田さんに伺いましたら、浮田さんのところで、もう使われてない印刷機を。


嶋本:そうそう、印刷機があってね。


加藤:譲り受けられたということですか。


嶋本:買ってない、ただでもらったと思うけど(笑)。「あげるから」言うので。それで、文字はわずかやったけどね、その文字をずーっと1個1個、つめたことあるんですけどね。



                 嶋本昭三オーラル・ヒストリー2008年8月21日 

                 兵庫県西宮市 アート・スペースにて

                 インタヴュアー:加藤瑞穂、池上裕子

                 書き起こし:鈴木慈子

                 公開日:2009年6月1日



 この、第1号だけが縦長の装丁となっており、第2号以降の体裁とは明らかに異なる。

 私はもちろん復刻版でしか見たことがないが、ある時長女の小﨑唯さんとお話していて、

 「あぁ、そういえば、こんなん家にありましたわ。まぁ、懐かしいわぁ」

 と言われた時には、なんだか不思議な気持ちになった。

 こうした訳で、私は機関誌『具体』第1号の中に、浮田さんがあのバラック小屋で星芳郎さんと活字を拾って編集発行し続けた『きりん』との相関性を感じずにはおれないのだ。


    浮田さんの本棚に大切に保管されていた機関誌『具体』第1号(復刻版)


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