完成したばかりの「焼け跡の『きりん』」(題字:猿澤恵子)
2024年9月15日の今日は、1924年9月15日に生まれた現代美術作家浮田要三の百回目の誕生日です。
前回のブログで、この生誕百周年を記念して「焼け跡の『きりん』」と題した児童詩誌『きりん』の研究報告書を発行することをご通知しました。
浮田さんのご親族、著作権者各位、関係者各位、資金面での支援者各位のご理解とご協力を得て、記念日に間に合う形で『きりん』サイズの小冊子を発行することが出来ました。
浮田さんの生誕百年記念日の朝を迎えて思うことを、少しだけ綴らせていただきます。
それは、今私の心中にあるのが、浮田要三というひとりの現代美術作家の生涯や画業のみならず、この小さくて今にも壊れてしまいそうな『きりん』が世に贈り出された敗戦直後のこの国の歴史そのものであることです。
これは、若き浮田さんの携わっておられた仕事が、いかに我が国の戦後教育や戦後美術にとって重要な意味を持っていたか、を示しています。到底、個人の仕事ではありえない幅の広さと内容の深さが、この小さな報告書から迫って来るのを感じます。
表紙に使わせていただいた足立巻一氏の撮影による「日本童詩研究会」事務所の前に立つ二人の青年、星芳郎と浮田要三の肖像をご覧ください。正に、焼け跡と呼ぶしかない風景の背景に、どれだけの渇きや希求が充満していたかを想像しながら。
鶴見俊輔らの興した『思想の科学』の記者として足立さんがお二人を訪問したのは、おそらく1954年半ばのことでしたが、その取材レポートと並んで、この一枚は『きりん』の歴史を考証する上で唯一無二の第一次資料です。私の文章が、この表紙の示す象徴的な意味に適う内実を得ているかは、読者の皆様にご判断いただく外ありません。
今回も、2022年秋に小海町高原美術館で開催した「浮田要三と『きりん』の世界」展の記念リーフレットでもお世話になった長野県佐久市の臼田活版株式会社様に校正・印刷で心強いご協力をいただきました。『きりん』を編んでいる浮田さんと星さんの気持ちを、私もわずかながら追体験することが出来ました。赤字が続いても、止められない理由も今ならよくわかります。
この続きは、来年の内には、別に一冊の本としてまとめたいと願っています。
どうぞ、手に取ってご笑覧くださり、児童詩誌『きりん』の歴史を発掘しようという私のライフワークにお力添えをお願いいたします。
焼け跡の『きりん』 頒価:1,100円(税込み)
送料:一冊分送料140円( 10月1日以降に変更の可能性有)
送料込みで 1,240円にてご提供いたします。
問い合わせ先 miyao.0107@gmail.com
携帯電話番号 090-5796-7506
2024年9月15日 一般社団法人ぷれジョブ
浮田要三と『きりん』の資料室
宮尾 彰
謝辞:「『きりん』を読む」連載に当り、長野県上田市のエディターズミュージアムによるご配慮に、心から感謝いたします。 ⇒Editor'sMuseum (editorsmuseum.com)
Comments