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『尾野一矢さんのおでかけ』ご報告

 先週末の6月25日(土)~26日(日)にかけて、神奈川県から尾野一矢さん、ヘルパーの大坪さん、ご両親のご一行を長野県小諸市の当法人事務所にお迎えしました。

 芹が谷園舎から自立したアパート生活が定着した段階で、次の目標として「外泊」が検討され、その最初の挑戦の場に小諸の地を選んでいただいたのです。

 25日(土)の午後2時間半弱、YouTubeによるライブ配信をさせていただきました。私たちにとって初めての試みでもあり、何かと不充分な点のあったことをお詫びいたします。

 午後2時から配信する直前に、一矢さんがその場に居合わせた参加者一人ひとりに『一本橋こちょこちょ』の仲良くなる魔法の儀式(?)を行ってくれました。気がつけば、全員が一矢さんの周りに輪になって、声を合わせてこの手遊び歌を口ずさんでいました。おかげで場の緊張がほぐれ、穏やかな雰囲気で2時間半ほどの配信を進めることが出来ました。

 (当日のお話の内容は、後日編集してあらためて皆さんにご視聴いただけるようにしたいと考えております。)

 最初の30分で、事件後から今日に至るまでの一矢さんと大坪さん、ご両親の辿られた道のりを大坪さん提供の動画や画像によって振り返らせていただきました。それを視ながら、大坪さんがご自身の個人史を内省されて語られた貴重なお話には心を動かされました。

 時々、一矢さんは『おしっこ~』とサインを出して大坪さんに伴われて場を離れました。

それは、絶妙なタイミングで、司会を務めた私からすると、場の空気を掴んで、対話に良い意味でのメリハリを付けてくれることになったように感じました。

 わけても、途中に挿入した津久井やまゆり園殺傷事件の犠牲者と海老原宏美さんへの黙祷に際して、私から1分間の黙祷をお願いした瞬間に、一矢さんも沈黙された時には、誰よりも死者たちに近く、彼ら彼女らと言葉を超えたところで交信しているのが一矢さんであるということに、あらためて気づかされました。

 後半では、ご両親が一矢さんの両隣に座られて、豪華な4人のオールスターキャストへのインタビューとなりました。折しも、庭先から涼風がカーテンを揺らしながら吹き始めて、一矢さんは心地よい午睡に誘われたかのような表情も見せるほど落ち着かれていました。

 配信終了後は、お隣の東御市にある日帰り温泉施設に向かいました。一矢さんのご希望でお風呂の前に早めの夕食を摂ることになりました。改装された素敵なカフェで長いテーブルに皆と並んで座った一矢さんでしたが、頼んだメニューが届くのが9人の中で一番最後になってしまったのです。心配した私たちの取り越し苦労で、静かに周囲の様子を見回したり、隣の会話に耳を傾けたりしながら待っていました。

 揚げたてのトンカツの乗ったカツカレーが目の前に置かれた途端、カツにガブリ!でも、これは本当に熱々だったらしく、すぐに大坪さんのお皿にカツだけ移されました。

 お腹が満たされた後は、いよいよ温泉です。私たち男性陣6人は、入浴客の多過ぎない、丁度良いタイミングで脱衣場から浴室に入りました。大坪さんに身体を洗ってもらい、先に一矢さんが浴槽に入りました。この間、お父さんは露天風呂で寛がれて、私たち3人が一矢さんと一緒に浴槽に並びました。ゆっくり少しずつ身体を沈められましたが、肩まで浸かると本当に気持ちよさそうな表情です。ご自身も身体を洗われた大坪さんが横に並んで背伸びをしておられます。この後、一矢さんの口から『出る~』と一言出る前に、私たちが早々に浴槽を離れていました。お聞きすれば、元々お風呂が大好きで、1時間でも入っているとのことで、その実力を垣間見た思いでした。

 さて、お土産を買ってお風呂から帰った後は、いよいよ懇親会の時間です。お正月に実家に帰られた際に、美味しそうに日本酒を嗜まれる動画も見ていましたので、つい一矢さんの吞みっぷりに注目が集まります。ガラスの器に注がれた地酒を、美味しそうに2杯、見事に干されました。その後も、いろいろな会話の飛び交う中、自分の席ですっかり宴席に馴染んでおられました。

 日付が変わろうとする頃、「お泊り」の本番、就寝の時間が来ました。ご両親の中では、ここが何よりも心配された場面でした。最初の内、『一矢んち帰る~』とつぶやいていましたが、ご両親と大坪さんが着替えるのに促され、一矢さんもパジャマに着替えて、洗面所で歯磨きを始めました。その後は、大坪さんと枕を並べて、朝までぐっすり眠られました。

 26日(日)の朝は、お父さんが庭で梅取りを楽しまれる間、終始穏やかな表情で事務所のデスクでお馴染みのアニメ『忍者ハットリくん』を楽しまれていました。

 お天気にも恵まれ、田舎の野菜直売所を経て野辺山高原のソフトクリーム屋さんに向かいました。高原の冷気で、肌寒いほどです。ここで美味しい空気と冷え冷えのソフトクリーム

を満喫!後は、美しい車窓からの風景を眺めながら神奈川のお家に帰るだけです。

 お母さんがふと漏らされた『本当に、たまにはこういうのが大事だよねぇ』という一言にこれまでの決して平坦ではなかったご家族の歴史の重みが滲んでいました。

 夕方には、元トラック運転手のお父さんからいつもの元気いっぱいのお声で『今さっき、無事に着きました!』とのご報告をお電話でいただいて、私たちもホッと胸を撫でおろしたことでした。

 2日間を振り返って、今、沁みじみと感じるのは、一矢さんの存在が人と人とを結びつけているという事実です。大坪さんの人生の分岐点に現れた恩人でもあるというお話も本当に忘れがたいエピソードです。一矢さんは、そうと意識されることはないでしょうけれども、

私たちの生きるこの国のあり方を問い続けるという、とても重要な使命を担わされた個人であるということを、あらためて知らされた時間でした。

                             (2022年6月28日)


            到着直後に事務所で一息つかれるご一行


          人と人とをつなぐ魔法の儀式 一本橋こちょこちょ

           前半は一矢さんと大坪さんにインタビュー


         後半は尾野さんご一家と大坪さんにインタビュー


          素敵なカフェで食べたいメニューを選びました


              朝、自分だけのくつろぎのひと時


           旅の終りは、高原のソフトクリームを満喫!

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