平井章一先生による講演『浮田さんとその作品』

 小海町高原美術館にも、冬の寒気が近づいて来ました。春から秋まで、茅野市と小海町を結ぶ麦草峠も、展覧会の会期終了直後の11月17日から、冬期間閉鎖となる予定です。

 松原湖の紅葉も、概ね例年通りのペースで進んでいる、との情報が入りました。

 10月30日(日)午後2時から『具体』研究の第一人者で関西大学教授の平井章一先生による記念講演会が開催されます。

 平井先生には、ご好評を博している今回の展覧会のご案内チラシにも「浮田要三の絵画」と題した解説を寄稿していただきました。講演会のご案内の意味で、ここにその終盤の一部を再録させていただきます。


 浮田が1990年代から2000年代にかけて個展の案内状に記した文章には、何度も「物」という言葉が登場する。ここで浮田がいう「物」とは、「ボク自身の存在」「ボクの『今』在る証し」であり、それは彼にとって“絵画”や“作品”という言葉が持つ造形的で感覚的な響きよりもずっと重厚で、深遠な意味を持つものであった。かつて「具体」で吉原から期待されながら応えることができなかった自己を確立するという課題を、浮田は奇想天外な発想ではなく、結果として出来た『物』の問題として受け止めたといえよう。

 浮田が言う「物」は、晩年になればなるほど、素材の物質性が希薄になる一方、構成はより大胆で簡素になり、色彩は明度を増していった。あたかも、彼の「物」創りの目標が、すがすがしく澄み切った境地をめざし、最後に自分自身が透明になることであったかのように。


 平井先生は、『具体』に連なった数多くの作家たちの群像の中に浮田要三を捉える視点をお持ちでありながら、同時に晩年の浮田さんとも個人的に親交を深められた方です。

 今回のお話のタイトルに、『浮田さんとその作品』という親しみやすくおおらかな言葉を選んでくださったのも、会場を包む心の鎮まるような空気に通じるように感じられます。

 先日、展覧会の題字を描いて下さった猿澤恵子さんにお会いした際、「今回の展覧会で、初めて浮田要三が『立体的』に見えたのが、とてもうれしかった」という感想をお聴きすることができました。平井先生のお話もまた、私たちに『立体的』で『具体的』な浮田要三の人間を示してくださることでしょう。

 皆様も、ぜひこの貴重な機会にご参加下さり、「浮田要三と『きりん』の世界」に浸っていただきたいと思います。                               

                            (2022年10月21日)


         「すがすがしく澄み切った境地」(第一展示室壁面) 

     平井先生も監修に携わられた『具体(復刻版)』 (第三展示室展示台)


           

    




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