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「不安」の反対語は? ~「安心」のGPS網でなく「信頼」の根に繋がる~

ぷれジョブ🄬を2003年に作ってから、もう100ぐらい生れては消えていったと思う。活動する人がいなくなっても定例会だけでもなさってお茶を飲んで待っていてくださいというと、いのちを吹き返すコトも稀に起きる。

いのちのはたらきに近い、なんて言って伝えてきたけど、こんなに風に生まれたり消えたりするとは思ってもいなかった。ぶれるので、はじめに「ぷれジョブ®とはなにか。」の理念を丁寧に伝えて、少し離れて実践をみまもりながら、1年一度振り返りながら、試行錯誤して新しいぷれジョブ🄬の誕生に立ち会うことを繰り返しています。

その都度、ぷれジョブ🄬が生き延びるのに必要な「本」、「人」、「言葉」に出会います。ぷれジョブ🄬の真ん中を中空にするため与贈し続ける力に感謝しています。




一昨日は、相模原殺人事件から5年の日で、一日、悼みの日にしておりました。そんな中で、新しくぷれジョブ®をはじめたいというAさんとの対話があり、ちょうど読んだばかりの本ともつながって、降りてきたコトを記録しておこうと思います。




「あいだ」の思想 高梁源一郎辻信一著 大月書店(2021年6月15日発行) 

自分と他者の「あいだ」~わからなさに耐える~ というページ


このページで、伊藤亜紗さん中島岳志さんたち東京工業大学未来の人類研究センター、人間の在り方や社会のあり方を再定義する「利他プロジェクト」の紹介をしている。伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『手の倫理』の前著も、ぷれジョブ🄬を伝えるとき引用させていただいている。ここでは、「利他」ということをぷれジョブ🄬の理念を紹介した図2・3(月刊実践障害児教育2019年6月号)とつなげて考えてみる。


P.124 辻:「「安心」と「信頼」は似ているように見えるけれども別物で、実は相反するものだ、と。利他には「いい利他」と「悪い利他」があって、その違いを安心と信頼から説明するのです。つまり安心というのは、相手との関係性に不確定要素がないことを意味し、これに対して信頼というのは、相手がどう動くのか不確定で、自分が大変な目に遭う恐れもあるコトを分かったうえで、「たぶん、大丈夫」とゆだねること。たとえば、おかあさんが子どもにGPSを着けて安心するのは、全く信頼していないってことでしょ。と。信頼というのは、子どもがどうするかわからない分、リスクを抱え込むけど、「たぶん、大丈夫」とゆだねるコトだと言うんです。



ぷれジョブ🄬には、「託す」「ゆだねる」「ゆるく」などのキーワードがあります。この「いい利他」をイメージして創作しています。それらを説明した図3の氷山モデルがあります。この伊藤さんの文を引いて解説してみたいと思います。


図2:「安心」のつながり方。

   一般的に「絆」(手をつなぐ)と呼んでいるつながりかた。

不確定要素(自分も他者も)は排除し限定し、自分の理解できる範囲から出ない。

弱さなど向き合えない部分は氷山下において、自分の一部も排除する。

他者、学校、企業の評価(氷山の上部分)に沿うよう行動が規定されて、社会からは逸脱しないような同規格の「いい子」的あり方により「安心」をつくる。

社会価値優先なので、自分の思いが二の次になって、次第に無理になる。

氷山下にある目に見えない世界の、不確定な他者や死者の命とのつながりはできるだけ切るようにして生きるので、身内以外の他者や死者の命にはコミットしない。絆を強めて「安心」するための、等身大以上の過剰な賞賛の常態化が起きやすく、自己肯定感は頭打ちとなり、不遜な成長を助長することもある。


図3:「信頼」のつながり方

   ゆるくてたくさんあるつながりかた(手は繋がず根でつながる)。

生者に垣根はなく、死者との垣根もない。

「根拠のない自信」とは「見えないけれども確かにあると感じる、根拠ある信頼」。


不確定要素を入れながらぷれジョブ🄬を進めると

   毎週企業が受け入れた・・生産性価値の会社も障害のある子どもを受け入る事実

   毎週サポーターが付き添った・・隣近所の人が偏見なく子どもを受け入れる事実

   自分の知らない人が活動に加わった・・危険を及ぼされない範囲をつくれる事実

   毎月同じ時間同じ場所で集まる・・・約束なしでも人が温かく集う事実

大人社会がつくった基準に到達して地域社会に出るのではなくて、生まれる前からそのままで地域に出る、飛び込んでも受け入れられないかもしれない、迷惑をかけるかもしれないという不確定要素を抱えて、しかし、社会は思ったよりも寛容であったという体験や子どもが他者に喜びを与えるのを知る体験を得て、おとなが変えられる。





*よくある「安心」例

・SNSで常時連絡確認し合い情報共有するのは、誰の「安心」のため?

・ジョブサポーターを障害の専門家、保護者にするのは「安心」のため?

・・・

年齢が上がるごとに不確定要素は増え「信頼」が増すのがよい。

親との距離に反比例して、友達などの他者との距離が近くなる。

子どもの育ちは自然が手本でありたい。


「今ここ」を楽しむこと、「子どもの声を聴く」ことよりも、保護者は、将来のために「地域で愛される子に育てよう、親に役に立つ子に育てよう、学校でほめられる子に育てよう、社会に必要とされる子に育てよう」と準備や予防の「安心」を子どもに装着させたくなる。しかし、それはもったいないコトで、かかわる個人個人が自分の感受性を磨くこともできる。「今ここ」、私個人の世界を深く掘り下げていくと、他者とつながりが感じられるようになり、命にかかわる社会課題、他者のコトでも自分ごとになり、ゆるく加勢したくなる。



全ぷれセミナー2016inさく において、第1弾『弱さの思想』をお勧めの一冊として紹介しました。第2弾『雑の思想』第3弾『あいだの思想』良書です。



仏性を引き出す「弱さの仕事」のことをPUREJOBと呼んでいます。

就労支援や〇〇支援や療育などとは違うおはなしです。



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