思いがけないかたち


            『壁のしみ』(アトリエUKITA外壁)


 11月13日(日)、9月17日(土)から開催した「浮田要三と『きりん』の世界」展(小海町高原美術館)が2ヵ月弱の会期を無事終了しました。

 初日オープニングセレモニーでの加藤瑞穂先生とのジョイント講演、10月30日(日)の平井章一先生の講演、11月12日(日)クロージングセレモニーのかりきりんライブ、最終日のオプションギャラリートークなどの諸企画も、無事に終えることができました。

 会期中に、私たちが想像していた以上の来館者に展示をご覧いただくことができました。

 あらためて、様々な形でこれまでご協力をいただいた皆様に、心より感謝申し上げます。


 タイトルにもある「思いがけない」という言葉が、今回の展覧会を象徴しているようにも思えます。長女の小﨑唯さんにお手紙を書いた時から展覧会を振り返る今現在に至るまで、数々の思いがけない出来事が、あたかも「『きりん』絵巻」のようにつながっています。


             壁面に顕れた「『きりん』絵巻」


 「思いがけないかたち」は、これまで何度も引用して来た加藤瑞穂さんの文章に出てくる

とても印象的なキーワードです。

 『浮田要三の仕事』(2015年りいぶる・とふん刊)の「吉原治良と浮田要三の接点」と題された論文で、加藤さんはハーバード・リードの文章を紹介しておられます。

 

 本書(『芸術と社会』1937)でリードは、「美術の起源」という一節で一歳の子どもが紙に鉛筆で描いたストロークとスクラッチの中に、子ども自身が「チャンス・フォーム(chance form)」、すなわち思いがけないかたちを見つけるだろうと記している。


 「浮田要三と『きりん』の世界」を貫くエッセンスはこの「チャンス・フォーム」の追求にこそあったのではないでしょうか?それを、限りなく原初的な「遊びの精神」そのものであると言い換えても構いませんが、子どもがおとなになる過程で多くの場合失われてしまうこの「感性の扉を開く『鍵』」を、私は今回の展覧会で引き継がせていただきました。

 

           チャンス・フォーム=思いがけないかたち


 展覧会「浮田要三と『きりん』の世界」は多くの発見と共に終わりました。これからは、私自身の歩みのうちに、新しく「浮田要三と『きりん』の世界」が始まります。


 「新しい」ということを、いいかえますと、「もう一つ、のりこえる」ということにもなるわけです。これには、その人だけにしかわからない勇気と決心がいると思われますが、その心は他の何万人の心よりも強いものがあって、これは、人間の心が、たとえようもなくたいせつであるということを物語っています。

 「もう一つのりこえる」という気持さえもちつづけておれば、人間の仕事にはおしまいがないこと、人間の「考え」や「心」におしまいがないということを、この展覧会から教えられ、わたしにも、コンコンと勇気がわいてくるのでした。


                          「人間の心に、おしまいはない」   


 浮田さんが『きりん』第11巻6号に寄せた「新しい絵画・世界展」を見ての感想です。最後の1段落が、思いがけず今回の展覧会を終えた私自身の感慨と重なります。


                            (2022年11月16日)     




  






 

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