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「すべて未知の世界へ―GUTAI分化と統合」展

 先週末から、大阪中之島美術館と国立国際美術館の合同企画により、美術家集団『具体』の全容に迫る展覧会「すべて未知の世界へ―GUTAI 分化と統合」が始まりました。

 昨年秋、小海町高原美術館の名取館長、中嶋学芸員とご一緒に訪れた兵庫県立美術館で、浮田要三初期の『作品』(1958年)と直に向き合う機会がありました。

 『どうしても、この1点だけは小海でも展示したい。』

 作品の前に佇みながら、こう願ったのを覚えています。残念ながら作品の保全などの観点から「長野県までの移送は困難」との判断に至り、この作品の借用は叶いませんでした。

 そして、現在、国立国際美術館【空っぽの中身 Empty Content】に展示されています。


 以前にも書かせていただきましたが、今回の展覧会が始まる直前に、私は思いがけなく、この最新鋭の美術館を訪問し、アーキビストと広報担当者にお会いする機会を得ました。

 大阪中之島の地は、『具体』の本拠地であった『グタイピナコテカ』を擁する言わば聖地であり、本展が吉原治良の没後50年(『具体』解散50年)を記念して開催されたことも本当に大きな意味を持っています。

 それと対比するととても「小さな」私たちの展覧会ですが、目下浮田要三と吉原治良との親密な交信の履歴を辿っています。浮田要三が、1951(昭和26)年吉原治良に宛てたハガキの存在が明らかになり、その内容を精査する中で「らくがきとチュリンガ石」という吉原による大変魅力的で、尚且つ重要な意味を持つ文章に突き当たりました。

 ふと気が付けば、こうして二つの展覧会が同時期に開催されていること自体が、吉原治良と浮田要三という二人の親密な死者たちへのオマージュを象徴しているのでした。

 来る平井章一氏による記念講演も、会期最後に予定している「かりきりん」のライブも、「浮田要三と『きりん』の世界」に吉原治良を招き入れる機縁となるにちがいありません。

 願わくは、一人でも多くの人に、この二つの展覧会を鑑賞していただきたいと思います。

                            (2022年10月24日)     


        「すべて未知の世界へ―GUTAI分化と統合」展ポスター  

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