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朋有り遠方より来る また楽しからずや


                朋有り遠方より来る  


 あまりに笑顔の眩しい記念写真なので、思わず冒頭に掲げてしまいました。(お二方からのご了承をいただいております)

 まるで、親戚の集まりか同窓会かのような空気感さえ感じられるスナップですが、実は、この3人は、つい30分前に「浮田要三と『きりん』の世界」の展覧会場で初めて出会ったばかりの顔合わせでした。

 『きりん』166冊の前に立つ、向かって左の男性が倉敷市立短期大学の金山和彦さん、中央の女性が神戸大学大学院の勅使河原君江さん。共に、10月30日(日)の午後に開催された『具体』研究の第一人者平井章一先生の記念講演「浮田さんとその作品」に参加するために、遠方から小海町高原美術館にお越しくださった研究者です。

 金山さんには、『具体美術協会と児童美術の接点について』(2002年)という論文がおありですが、宮尾が会期中にネット検索していた際にこのお仕事を知り、直後にお勤め先にメールを差し上げました。すぐにご返信があり、わずか数日の間に小海町に来られることが決まりました。

 勅使河原さんは『きりんの絵本』の巻末に付された「『きりん』表紙絵作者一覧」でそのお名前は存じていましたが、当日会場で浮田さんの長女小﨑唯さんがご紹介くださった20年来『きりん』研究を続けておられる方です。

 限られた時間ではありましたが、以心伝心との言葉通り「浮田要三と『きりん』の世界」を語り合って忘れがたい時間をご一緒させていただきました。会場には会期の途中から展示に加えられた浮田さんが吉原治良に宛てた葉書もあったことから、お二人の研究者の反応も殊のほか熱く、いくら時間があっても足りないのでした。


           新資料:浮田要三が吉原治良に宛てたハガキ


 ちなみにですが、この写真を撮ってくださったのは、交代で作品保護のために会場に詰めておられる小海町のシルバー人材センターのおじさんです。今回の展覧会に来られた来館者の反応がとても生き生きとしている印象を持っておられるそうです。撮影をお願いした際もおじさんご自身がとてもうれしそうにしておられましたので、スマホでシャッターを押してくれたおじさんのはずむ心までが写真に写り込んでいるようにさえ感じられます。

 今日は、会期末まで1週間を切った月曜日でしたが、東京からのお客様、隣村からのお客様、偶然美術館で会った仕事仲間など、私自身の知り合いも何組か訪ねてくれました。

 明日には、オンラインで12日にライブをしてくださる「かりきりん」のお二人と打合せを持ちます。明後日には、大阪と千葉からお越し下さる2組のお客様も決まっています。

 『朋有り遠方より来る また楽しからずや』という『論語』の言葉がありますが、冒頭の写真の醸し出すおおらかさには、本当に心が和らぎます。

 唯さんが初日の夜の懇親会で『浮田要三のドヤ顔が目に浮かぶようです』とうれしそうに語られた際の笑顔も、これとまったく同じだったように思います。

 


                 また楽しからずや


 お二人は、浮田さんのギャラリーでの個展でも『きりん』の詩に曲をつけて歌って来られました。敗戦直後の日本で少年少女たちが日々の厳しい生活から生み出した情緒豊かな詩情を物悲しくユーモラスなメロディに乗せたステージは、誠に展覧会を締め括るのに相応しいテイスト(味わい)を湛えています。

 今回は京都から遠路はるばる自動車にコントラバスを積んで小海町に来てくださいます。

 どうぞ、お一人でも多くのお知り合いを誘ってご参加ください。『きりん』166冊前の特設ステージは、後にも先にも、かけがえのない舞台です。

                             (2022年11月7日)  

 

 

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